【交通事故Column 39】
自転車が歩行者に衝突して、死傷させる重大事故が後を絶ちません。
自転車と歩行者の衝突事故件数は、年間約2500件にも上り、若者が加害者となるケースが多いといわれています。
自転車は、環境に優しい交通手段として、今後ますますの活用が期待されていますが、その一方で、スマートフォンを操作しながらの片手運転や、イヤホンを装着した状態での運転など、自転車ユーザーの危険な走行が目立ちます。
自転車ユーザーには、安全に対する意識や交通マナーの向上に加え、万が一の交通事故への備えが求められます。
近年、自転車事故で高額な損害賠償を命じる判決が相次いでいます。例えば、2013年の交通事故訴訟で、神戸地方裁判所は、歩行中の女性に衝突して重傷を負わせた自転車ユーザー(小学生)側に、約9500万円もの支払いを命じました。
自転車も利用方法を間違えれば、小学生でも誰でも、重大事故の加害者となりうるということです。それを念頭に置いて運転する必要があります。
交通事故を起こさないこと、交通事故に遭わないことが一番ですが、もし発生してしまったら、損害賠償の問題に直面します。自動車の場合、自賠責保険の加入が義務付けられていますが、自転車の場合は、保険への加入は任意です。
実際に、自転車事故の被害者の方からご相談をいただき、加害者が任意保険に加入していなかったケースも少なくありません。
加害者が保険に加入していない場合、損害賠償の請求は、加害者に直接行いますが、加害者に財産がなければ、現実的に損害賠償金を支払ってもらうことは困難になります。
こうした実情のもと、被害者救済の観点から、政府(有識者検討会)は、自転車事故による損害賠償の在り方に関する議論を始め、今後、自転車保険の加入促進を働きかける意向を示しています。
既に、自転車保険への加入を義務づける条例を制定する自治体もあるようです(参考:埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例)。条例で定めることは歓迎すべき動きですが、罰則規定を設けていないため、実効性のほどは分かりません。
また、大阪府では、自転車保険の加入を府立高校での自転車通学の許可条件にしています(参考:大阪府自転車条例)。こうした動きは、保険加入率を高める良い参考例になるでしょう。
加入義務の有無を問わず、自転車も、自動車も、万が一に備えて保険に加入しましょう。なお、任意保険ご加入の際は、弁護士費用特約を付加されることを強くおすすめします。
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